欠陥エアバック問題で、度重なるリコールを受けていた「タカタ」が民事再生法の適用申請に向けて最終調整に入り、今月内にも東京地裁に申請をする予定となっています。タカタの負債額は1兆円を超える見通しとなっており、民事再生法申請に踏み切った形となりました。
タカタの民事再生法が適用されると、製造業の倒産は戦後最大のものとなる見込みです。国内・国外の自動車メーカーを巻き込んでいる1兆円を超える大規模なリコール問題は、自社ではもはや手をつけることが出来ずに裁判所の管理のもと進められていくことになります。
タカタは日本の民事再生法に当たる米連邦破産法11条の適用申請を今月の取締役会で正式に決定する見込みです。しかし、事業自体は継続的に続ける見通しで、エアバックやシートベルトの供給はそのまま続いていく模様です。
事業を継続するためにはスポンサーが必要となりますが、現状そのスポンサーとして再建を主導する立場なのが中国・寧波均勝電子傘下の米自動車部品大手、キー・セイフティー・システムズ(KSS)が濃厚です。KSSの新会社が約1800億円でタカタの事業を買い取り、エアバックやシートベルトの供給を続けるとされています。
リコールが相次いでいたタカタが製造したエアバック。タカタのエアバックの異常破裂問題による死者は2016年の10月までにアメリカ国内だけでも11人となっていました。リコールの対象となる製品は世界で約1億個になっており、費用の総額は約1兆3000億円と見込まれています。
タカタは、「不具合の責任所在が分からないため、自社では費用の負担割合を合理的に見積ることは出来ない」として、今ままではこの大半の費用を大手の自動車メーカーが一時的に肩代わりしていました。
今回の民事再生法により今まで大手の自動車メーカーが肩代わりしてきたリコール費用の大半を債権として届け出る方針ですが、タカタの未請求のリコール費用を含めた総負債額は1兆円を超える見通しです。製造業では戦後最大の倒産だった16年のパナソニックプラズマディスプレイの負債総額、5000億円を上回る規模になります。
タカタの民事再生法申請により各自動車メーカーへの影響もとても大きいと思われます。見通しのつかないこの負債額にこれまで大半のリコール費用を負担してきた各自動車メーカーも頭を悩ませているはずです。
現状、中国・寧波均勝電子傘下の米自動車部品大手、キー・セイフティー・システムズ(KSS)がスポンサーにつき、裁判所の管理下の元再建が進められていく見通しではありますが、各部品メーカーなどへの供給にどのくらいの影響があるかが不透明なため、実質的に各自動車メーカーにどのくらいの影響が出てくるか不安が残ります。
加えて日本製の自動車の輸出、現地での製造にも大きな影響が出て来るでしょう。
かねてからアメリカの経済に大きな影響を与えて来た日本の自動車ですが、今回のタカタの民事再生法申請により、アメリカ側が日本の自動車に関する貿易について強い姿勢で臨んでくると思われます。
タカタのエアバックは世界で第2位のシェアがあるために民事再生法が適用されたからといって「はい、安心」というわけにはいかないようです。大手自動車メーカーにとっても株価に直結してくるような大きな影響が見られると思われます。国内だけでは済まないこの世界的な動きに各自動車メーカーがどのような対応処置をとっていくか今後注視していきたいと思います。