豊洲市場の移転問題で、豊洲市場に新たに建設する予定だった観光施設「千客万来」の運営会社「万葉倶楽部」が撤退する意向を東京都に伝えていることがわかりました。この撤退は先日小池都知事が発表した築地市場も観光拠点として再開発するという基本方針を受けたもので、豊洲と築地の両方を観光拠点とすることになると採算がとれなくなる恐れがあるということから撤退する意向となった。
豊洲市場に関する運営会社の撤退騒ぎは今回の「万葉倶楽部」に始まったことではありません。今回の万葉倶楽部は運営会社としては3つ目で、その前にも「大和ハウス」「すしざんまい」という大手企業が豊洲の観光施設の運営を担当していましたがいずれも撤退し、今回の万葉倶楽部も同様の意向を示したということで、今後の豊洲市場の運営には大きな影響が出てきそうですね。
また、度重なる豊洲市場の問題を受け、小池都知事の責任問題や、今後の対応についても注目されます。豊洲市場の運営会社についてのこれまでの経緯と今後の影響についてまとめました。
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東京都は、築地市場の豊洲移転に伴い、豊洲市場に「千客万来」という食文化を発信するための観光施設をオープンさせる計画でした。その観光施設を運営・整備するための運営会社が「万葉倶楽部」でした。万葉倶楽部は神奈川に本社がある温泉施設を運営する会社で、運営する温泉施設は県内・県外からも多くの利用者が集まる人気温泉施設となっています。
この万葉倶楽部が豊洲市場の観光施設「千客万来」の運営会社として発表されたのは2016年3月。2018年の8月には飲食・物販店が集まる商業施設がオープンする予定となっていました。しかし、豊洲市場から汚染物質が発見された問題や、小池都知事の豊洲移転の見直しを受け、一時着工をやめ、施設のオープン時期も延期となっていました。
そこに先日6月20日に小池都知事から豊洲市場に関する東京都に基本方針が発表され、豊洲市場に移転はするものの、築地市場も今後5年間をかけ食のテーマパークとして再開発して利用することとなりました。
この発表を受け、万葉倶楽部は豊洲と築地の両方に同様の観光施設ができれば、互いに客を奪い合うことになり、事業の採算が取れなくなるとして今回の豊洲市場の観光施設「千客万来」の運営・整備から撤退する意向を東京都に伝えることになりました。
また、万葉倶楽部は小池都知事に対しても
「移転延期が発表されてから1年近く、小池知事の対応を注視してきたが、前提条件が変更されては事業は成り立たない。すでにことし1月に予定していた建設工事の開始を見送るなど影響が出ていて、3年後のオリンピック・パラリンピックの開催前を目指した開業も困難になっている。小池知事の基本方針からは具体的な内容が見えず、これ以上、待つことはできない」
として、万葉倶楽部側としても待ちに待った上で我慢の限界が来たことを明かしています。この撤退の意向が承認されるとまた豊洲移転に関して新たに大きな問題が浮上してきてしまう。東京都の万葉倶楽部の今後の動きについて注視していきたいですね。
実は豊洲市場の撤退は「万葉倶楽部」が初めてではありません。万葉倶楽部の前には「大和ハウス工業」「すしざんまい」といった企業も運営・整備の事業者として参入していましたが、いずれの企業もさまざまな問題を受け、撤退としています。「大和ハウス工業」や「すしざんまい」が撤退した際にはどのような問題が起こり、どのような理由で撤退していったのでしょうか。その経緯をまとめてみました。
大和ハウス工業が撤退を表明したのは2015年の2月23日です。大和ハウス工業は東京都が豊洲市場の計画を一部白紙にしたため、豊洲市場との開業に見通しがつかなくなったとして撤退を発表しました。
大和ハウス工業は「すしざんまい」を展開する喜代村と2社で豊洲市場の運営・整備をしていて、大和ハウス工業は「調理器具市場」や「ものづくりが体験できる施設」を担当する予定でした。
しかし、大和ハウスが担当するエリアに青果市場関係者から「搬入用車両の通行の妨げになる」などとのクレームがつくなどして作業が難航し、予定する時期での着工が困難になったため大和ハウス工業は計画から辞退することになりました。
大和ハウス工業とともに豊洲市場の運営・整備を担当していた「すしざんまい」を経営する「喜代村」は、大和ハウス工業が撤退したのちも豊洲市場の担当エリアの事業を継続するとしていました。
しかし、この喜代村も2015年の4月28日に撤退を表明しました。その理由としては、「大江戸温泉物語」との競合が最大の理由でした。
というのも、喜代村が豊洲市場の運営・整備をする条件の一つとして、「大江戸温泉物語と2021年以降の契約を延長しないことの明文化」を東京都に要請していましたが、東京都は「明文化はできない」としたため、喜代村の木村社長は涙ながらに豊洲市場の運営・整備からの撤退に踏み切りました。
そして今回の万葉倶楽部の撤退の意向表明。もし、このまま万葉倶楽部が撤退をすればこれで3社目の撤退となる。東京都としては今後のスケジュールに影響を与えないためにも何としてもお互いの意向を調整して撤退を食い止めたいところです。
万葉倶楽部の撤退の意向表明により、もしこの撤退が決まった場合には今度豊洲市場にはどのような影響が出てくるのでしょうか。また、受け入れる先となっている豊洲市場がある江東区にはどのような影響があるのでしょうか。豊洲市場の移転問題へどのような影響が出てくるかをまとめてみました。
もし万葉倶楽部の撤退が決定するとなれば、観光施設からの興行収益を見込んでいる東京都の収支に大きな影響が出てきます。撤退はしなくとも、これから東京都と万葉倶楽部の間で話し合いが持たれ、双方の折り合いをつけて再度着工したとしてもオープンする時期がさらに遅れることを考えると収入源としての利用が遅れるため、先日小池都知事が発表した基本方針にもあった収支計画も大きく崩れる恐れがあります。
万葉倶楽部が撤退し、観光施設のオープンが白紙、もしくは大幅に遅延することになれば、現在豊洲市場がある江東区からも大きな批判の声が集まることが大きく予想されます。
江東区としても11日に行われた記者会見で「豊洲に市場をつくる前提条件として、場外市場も一緒に持ってきてほしいと申し入れている。これを受けて東京都からは豊洲新市場は、市場本体とにぎわい施設が一緒になって、初めて新市場だという説明を受けている」としました。
東京都に対しても「小池都知事がどのような方針をとろうとも、この約束は果たしていただきたい」と述べていました。江東区としては地元の活性化対策として市場の移転を受け入れるという前提条件があったためにこのような発言があるのは当然のことですね。
万葉倶楽部の撤退に関して、万葉倶楽部の撤退が決定した場合は、東京都の方が先に前提条件を崩したとして東京側に違約金の支払いが発生する場合があるとしています。これ以上の出費をしないためにも東京都は何としても万葉倶楽部とうまく折り合いをつけて観光施設の建設を継続してもらいたいですね。
このように次から次へと問題が浮上してくる豊洲の移転問題ですが、この万葉倶楽部の撤退意向の表明については東京都や小池都知事には大打撃となったことは言うまでもありません。無事に計画を進めていくためにも万葉倶楽部には何としても着工を継続してもらいたいものですね。正直、都民や国民たちからしたら「もういい加減にしてれよ」という声が聞こえて来そうですが、この豊洲移転問題に対しての具体的な方針やスケジュールを出していただき、早期決着を目指していって欲しいと思います。